#1「ウェイトトレーニングをすると体が重くなる」っていうけど、実際どうなの?

「ウェイトトレーニングをすると体が重くなるからやらない」

「体のキレが落ちるからやらない」

日本のスポーツ業界(特にサッカー界)でよく耳にする言葉ではないでしょうか。

筋力不足を認識、もしくは指摘されてウェイトトレーニングをしようか悩んでいるアスリートにとって、この言葉はかなり引っかかるものがあると思います。


タイトルについてまず私の見解を率直に述べると、

適切なプログラムやフォームで行い

フィジカル強化がパフォーマンスアップに繋がるメカニズムを理解していれば

そんなことはないと思います。


ではなぜ、上記のようなことが通説として言われてしまうのでしょうか?

理由としては以下のものが考えられます。


①疲労が過剰に蓄積している

②トレーニングで向上した体力を競技に必要なスキルに擦り合わせることができていない

③体重が過剰に増えてしまった

④そもそもトレーニングプログラムやフォームが間違っている


それでは、①から順に詳しくお話しさせていただきます!


①疲労が過剰に蓄積している

「疲労が過剰に蓄積したら、そりゃ体は重くなるしキレも落ちるでしょ?」

もちろんそうです。体力はトレーニングと休養をどちらもしっかり行い、継続(それこそ年単位で)することで向上するものです。短期間でびっくりするような体力向上効果が出てしまっては、それはもはやドーピングです。

しかし、オフシーズンのこの時期から“フィジカル合宿”などと称して、短期間に体力向上トレーニングを詰め込んで行うことが散見されます。

ウェイトトレーニングに魔法のような効果を期待しているのでしょう。

その場合でも、トレーニング初心者は神経系の適応が生じ、一気に筋力やパワーが高まる可能性はあります。

ただ、ある程度のトレーニング経験者や体力レベルがそこそこ高い方ではそのような効果が得られる可能性は低いです。

基本的には無理やり詰め込んだ分、疲労が過剰に蓄積し、怪我のリスクが高まることが考えられます。もちろん、体は重くなるでしょう。そして重くなった(疲れた)割に、体力が向上していないことを実感します。

この理想と現実のギャップが「ウェイトトレーニングをすると体が重くなるからやらない」という思考を生み出してしまうのではないでしょうか。


②トレーニングで向上した体力を競技に必要なスキルに擦り合わせることができていない

トレーニングを実施して体力が高まったということは、「体力が変化した」ということです。もちろん変化した体力に合わせて、競技スキルも調節していかなければいけません。

サッカー選手の場合、筋力の向上に伴いロングキックの飛距離が伸びたとしましょう。

当然今までの感覚でロングキックを蹴っていては、狙った箇所にピンポイントで届かせることが難しくなります。この感覚が狂った状態のままでは、パフォーマンスが上がるはずがありません。

この変化はキックなど競技特有のスキル面だけでなく、ジャンプやスプリント、ステップなどムーブメントスキルにも影響を及ぼします。スキルの調節を怠ると「スクワットの重量は上がったのに、かえって足が遅くなってしまった」という悲しい事態になりかねません。

感覚が狂ったまま競技スキルを擦り合わせることをせずに競技を続けてしまった結果、「ウェイトトレーニングを初めてからパフォーマンスが落ちた」ということになってしまっている可能性もあるのではないでしょうか。


③体重が過剰に増えてしまった

確かにウェイトトレーニングを継続すると体重が増えます。ウェイトトレーニングを始めたての最初のうちは神経系の適応によって筋力やパワーが向上します。神経系の適応だけでは筋力向上が頭打ちになると、徐々に筋線維数を増やす=筋肥大をすることによって、筋力やパワーを向上させていきます。

これは競技によってはメリットにもデメリットにもなりうるでしょう。特に階級制競技や持久性競技の選手にとってはデメリットになりうる要素です。

また、体重に対しての筋力・パワーが高いことはアスリートにとって非常にメリットになります。例えば体重が70kgのアスリートが二人いたとしましょう。スクワットの1RMを比較した際、一人が100kgでもう一人が120kgとすると、後者の方が体重に対しての筋力が高いことになります。

体重に対しての筋力が高強い方が、体をより大きく・より速く動かせそうなことはなんとなくわかるかと思います。競技やアスリートの特性にとっては、体重を極力増やさず、筋力・パワーを高めていくことも必要になります。

ここで重要になるのがプログラムの組み方です。

コンパウンド種目(スクワットやデッドリフト、パワークリーンなど)を中心に、「低回数・高重量」で行いましょう!

筋肥大はトレーニング量(重量×回数×セット数)に比例しますが、筋力は重量(1RM。一回挙げることのできる最大重量)に比例します。筋力向上にフォーカスしたプログラムを実施することで、体重増加を必要最小限に抑えつつ、ウェイトトレーニングならではの恩恵(筋力向上、パワーアップなど)を最大限受けていくのです。


④そもそもトレーニングプログラムやフォームが間違っている

何のためにトレーニングを行うのか?」をまず最初に明確にしておくことが、当たり前ですが非常に大切です。アスリートの方々でしたら、目的はほぼ「試合に勝つため」ではないでしょうか。

アスリートが試合に勝つことを目的として構成するトレーニングプログラムは、筋肥大を目的としたボディビルダーのトレーニングプログラムとは異なることがほとんどです。

また、エクササイズフォームも目的に応じて変えなければなりません。例えばアスリートは筋力を向上させるためにスクワットを行いますが、パワーリフターはスクワットをいかに重い重量で行うかを目的にスクワットを行います。両者は似て非なるものです。

手段が目的化し、「いかに重い重量を扱えるか」だけを追求してはいけません。

プログラムやフォームは「何のためにトレーニングを行うのか?」という目的を基準に選択するようにしましょう。こちらの選択を誤ってしまった結果、ウェイトトレーニングを継続しても思ったような効果を得ることができない可能性があります。


★次回の記事で、アスリート向けのトレーニングプログラム作成について解説させていただく予定です。併せてご拝読いただければ幸いです。


筋力向上のためのトレーニングをしなくても、元々筋力やパワーの高いアスリートはいます。

このいわゆる「天才」タイプのアスリートが、ウェイトトレーニングをせずに競技で結果を出している状態で、さらに上記のように間違った・不適切なウェイトトレーニングを実施したとしましょう。結果としてそれでパフォーマンスが落ちてしまった場合、「ウェイトトレーニングをしない方が良いんじゃないか」と考えてしまうのは当然だと思います。

天才も、そして天才でない方も正しく継続することで体力を効率よく高められるのがウェイトトレーニングです。

ぜひ目的に応じて正しくウェイトトレーニングを行い、アスリートとしての体力向上を実感してください!


柔道整復師/鍼灸師/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー

吉澤 悟

合同会社 Forward Life 公式ホームページ

埼玉県富士見市、東武東上線ふじみ野駅近くに所在を置く会社です。主に鍼灸接骨院事業、トレーナー派遣事業、リハビリ・パーソナルトレーニング事業、運動・健康増進教室事業,、セミナー事業を営んでいます。

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