#3 どうしてトレーニングをすると“体が変わる”のか
トレーニングをすると体は変わります!
スプリントのタイムが縮まったり跳躍力が上がったりと、選択したトレーニングに合わせて機能面で徐々に変化が現れます。もちろん筋量の増加や体脂肪の減少など、見た目も変化していきます。
なぜでしょうか?
「そりゃトレーニングをしているからでしょ。当たり前じゃん!」
そう思う方もいらっしゃると思います。しかし、人体の持つ素晴らしいシステムがあるからこそ、この当たり前が成り立っているのです。
では、その人体が持つシステムについて簡単に解説していきます。
今回ご紹介するシステムは大きく分けてこの3つです。
①ホメオスタシス
②ストレス状態
③適応
それでは①から順に説明させて頂きます!
まずはホメオスタシスです。
こちらは日本語で“生体の恒常性”と言い、「外部環境(気温、湿度、気圧など)が変化しても、生体内部の環境(体温、血圧など)を一定に維持する機能」のことを指します。
次にストレス状態です。
これは「体の外から加えられた種々の刺激に対して、体に生じた歪み(ストレス)とその結果生じる防衛反応の全体像」です。このストレス状態を引き起こす刺激のことをストレッサーと言います。ストレッサーには物理的、科学的、生理的、精神的なものなどさまざまなものがあります。
最後に適応です。
適応とは「生物の諸性質(形態、生理機能、行動など)が、その環境で生活するのに都合よくできていること、またはそのような状態に変化していく過程」を言います。
それでは上記のシステムをトレーニングに当てはめてみましょう。
ストレッサー(=トレーニング)によって生体のホメオスタシスに歪みが生じ、ストレス状態が作り出されます。そうすると体はホメオスタシスを維持するために、ストレスに対して防衛反応を起こします。
そしてストレスに耐え、ホメオスタシスを維持することができると、体はこのストレッサーに耐える能力を身につけたことになります。これが適応です。
この繰り返しで体は徐々に変化し、さまざまな種類・強度のストレスに適応することができるようになっていきます。
こうしてトレーニングをすることで体は変わっていきます。
注意点ですが、この適応は必ずしも狙った通りに起こるとは限りません。
どういうことかというと、例えばの話ですが、走り込みを毎日100本行ったとしましょう。このトレーニングで良いフォームを身につける可能性もあれば、反対に悪いフォームが染み付いてしまう可能性もあるということです。
ストレッサー、つまりトレーニングは狙った適応を起こさせるためのトリガーとも言えます。
トレーニングによりストレスを作り出して、選手に刺激を加えるのは指導者の役割です。
望んだ適応を促すためには、体に対して最適なストレス状態を作り出す必要があります。
こちらを詳しく説明したものが、トレーニングにおける重要な原則の一つである【特異性の原則】です。特異性の原則についてはまた次回の記事で詳しくお話しさせて頂きます!
最後にストレスについて少しお話しさせて頂きます。
現代においてストレスは悪いものと捉えられがちですが、人間の能力を維持するためにはその能力に見合うストレッサーが必要になります。
長期間トレーニングをしないと、身体機能が低下していくのはまさにこのためです。
身体機能を維持・向上させ続けるためには、体に対して最適なストレス状態を作り出していく必要があります。
そして体は常に成長と衰えを繰り返します。なので、ある時は最適だったストレッサーが、また別の時になると不適切(過剰・もしくは不足)になることもあります。
同じ負荷量でも、その時々で体に加わるストレスは異なることに注意が必要です。
また、ストレスは適応が起こる範囲で加えることが重要です。
過度なストレス状態が長期間継続すると、適応が起こるどころか疲労が過剰に蓄積し、怪我だけでなくオーバートレーニング症候群やその他疾病にかかるリスクが高くなります。
もちろんストレスを加えることが変化を起こす、つまり強くなるためには重要ですが、どの程度のストレス状態を作り出すべきかについてはしっかりと考える必要があります。
トレーニングは体にダメージを与えるために行うものではありません。結果として必要なダメージが加わることはありますが、トレーニング計画を立案する中で、ストレスと体をどのように向き合わせて適応させていくかを考えます。
手段が目的化しないように注意をしてトレーニングを行いましょう!
以上、トレーニングをして体が変化する過程についてお話しさせて頂きました!
こちらがご理解頂けると、練習やトレーニングプログラムの作成が明確になりやすいです。
「何のためにトレーニングをするのか?」
「トレーニングをした結果、どのように変わりたいのか?」
こちらを最初に定めた上で、狙った適応を促すようなトレーニングプログラムをぜひ作成頂ければと思います!
柔道整復師/鍼灸師/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
吉澤 悟
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